
ベジタリアンやヴィーガン、ムスリムの方への対応は、専用のキッチンやハラール認証から始めなくても進められます。観光庁のガイドは、いつものメニューを少し変えて共通で食べられる料理を用意し、何を使っているかを書いて見せることを第一歩にしています。
この記事では観光庁の「ベジタリアン・ヴィーガン/ムスリム旅行者おもてなしガイド」(令和6年4月)をもとに、避けられる食材とメニューの置き換え方、対応内容の見せ方と載せる場所をまとめました。アレルギーの書き方や支払いなど、接客全体で先に書いておくことは言葉だけに頼れない接客の記事にあります。
ベジタリアン・ヴィーガン・ムスリムの方が、それぞれ避けるもの

同じ「食事の制限」でも、避けるものは人によって違います。ガイドによると、ベジタリアンの方は肉や魚介類を食べず、卵や乳製品を食べるかどうかは人によって変わります。ヴィーガンの方は、それに加えて卵・乳製品・蜂蜜・ゼラチンも食べません。ムスリムの方は、豚と豚由来のもの、アルコールを口にしません。
| 避けるもの | 見落としやすいもの | |
|---|---|---|
| ベジタリアン | 肉、魚介類(卵・乳製品は人による) | かつおなど動物由来の出汁、ラードなど動物性の油 |
| ヴィーガン | 上に加えて、卵・乳製品・蜂蜜・ゼラチン | マヨネーズ、バター、チーズ、ゼラチンを使ったデザート |
| ムスリム | 豚・豚由来のもの、アルコール、適切に処理されていない肉 | みりん、ラード、豚骨スープ、乳化剤やゼラチンなどの豚由来成分 |
日本料理でとくに気をつけたいのが出汁とみりんです。ガイドは、具材に魚を使っていなくても、かつおなど動物由来の出汁は避けられるとしています。ムスリムの方については、多くの方がみりんを含む酒を口にせず、醤油に含まれる微量のアルコールを避ける方もいると書かれています。
旅行中に、食事の基準をゆるめる方の割合

ガイドが2023年12月に行ったウェブ調査では、ベジタリアン・ヴィーガンの方の約4割が、海外旅行のときは食事制限の基準を「緩める」と答えました。日本に来たことのある方では約7割です。専用の調理器具については、約1割が「全く気にしない」、約2割が「しっかり洗っていれば問題ない」と答えています。
ムスリムの方への調査でも、専用のキッチンについて約2割が「全く気にしない」、約4割が「少し不快だが仕方がない」と答えました。回答数はどちらも国ごとに50人台の小さな調査ですが、どこまで守るかは人によって違い、お店が何に対応しているかが分かれば、お客様が自分で選べることが読み取れます。
誰でも食べられる共通メニューへの置き換え方
ガイドは、ベジタリアン・ヴィーガン向けとムスリム向けを別々に作るのではなく、ベジタリアン・ヴィーガンの方もムスリムの方も、一般のお客様も食べられる「共通対応メニュー」を用意する考え方を示しています。たとえば天丼なら、具を野菜だけにして衣に卵を使わないようにします。出汁を昆布やきのこに、たれのみりんを糖類に替えれば「野菜天丼」になります。
同じガイドには、カレーやペペロンチーノ、焼き餃子、味噌煮込みうどんの置き換え例も載っています。肉の代わりには豆腐や厚揚げ、シイタケ、麩、大豆ミートが、ゼラチンの代わりには寒天が挙げられています。どれも業務用のスーパーや通販で手に入るとされています。
Point専用のメニューを一から作るより、いつもの人気メニューを1品、誰でも食べられる形に置き換えるほうが、手間も費用も小さく始められる。
調味料と出汁の、ラベルで確かめたい原材料

肉や魚を抜いても、調味料や加工食品に動物由来のものが入っていることがあります。ガイドは、見た目が動物性に見えないものでも、ラベルで原材料を確かめるよう求めています。
ガイドのよくある質問では、白砂糖も挙がっています。砂糖を作るときに動物の骨を使う場合があり、気にする方もいるので、メーカーに確かめておくとよいとしています。醤油や味噌にアルコールが入っているかどうかも、ムスリムの方向けには確かめておきたいところです。
一方で、グルテンフリーやオーガニック、添加物の有無は、ベジタリアン対応とは別の話だとガイドは整理しています。調理器具も必ず分ける必要はなく、肉の成分が混ざらないようにしっかり洗っておくことが大切だとしています。
何に対応しているかを、ポリシーにして見せましょう
ムスリムの方への対応には段階があります。ガイドは、いちばん手前の情報開示から、豚とアルコールを使わないノーポーク・ノーアルコール、調理器具や食器まで分けるムスリムフレンドリー、第三者機関のハラール認証までを並べたうえで、日本に旅行に来るムスリムで認証まで求める人は少ないとしています。
ガイドが勧めているのは、対応している内容をポリシーとしてまとめ、店頭に掲示したりSNSに載せたりすることです。厳格に対応しているかどうかより、対応内容を明示することが重要だとしています。豚を使っていないこと、出汁が昆布であること、調理器具は共用で洗っていることなど、事実をそのまま書けば十分です。
ベジタリアン・ムスリムの方がお店を探す場所

対応していても、探している方に見つけてもらえなければ来店にはつながりません。ガイドによると、ベジタリアン・ヴィーガンの方がお店を探すのに最も一般的に使うのはGoogleマップで、ビジネスプロフィールの店舗情報に対応していることを書いておくよう勧めています。
専門の口コミサイトもあります。ガイドの2024年2月時点の数字では、ベジタリアン向けの口コミサイトHappyCowに日本の飲食店が4,123店舗、国内の店に絞ったVegewelに1,667店舗載っています。Tripadvisorでもベジタリアン対応で絞り込めます。メニューとポリシーを整えたら、Googleマップとこうしたサイトの店舗情報にも同じ内容を書いておきます。国ごとの探し方は、イギリスの観光客の記事やシンガポールの観光客の記事にまとめました。
最初からやらなくていいことと、外に頼むと早いこと

専用のキッチン、ハラール認証、全メニューの対応は、最初からそろえなくて構いません。ガイドも、すべてを最初から完璧にしようとせず、理解を深め、今あるメニューを活かすところから始めるよう書いています。まずは人気の1品を置き換え、使っている食材を書いて見せるところからです。
料理ごとの原材料を確かめて一覧にするのは、お店の厨房でしかできません。その一覧を英語の表示やポリシーにまとめること、Googleマップや口コミサイトに載せることは、外に頼むと早く進みます。東京都内のお店なら、東京観光財団の補助金の対象経費に「多様な文化・習慣を有する外国人旅行者の受入対応に係る整備」があります。何が対象になるかは東京都のインバウンド補助金の記事と財団の手引きで確かめてください。
よくある質問
Q. ベジタリアン対応のために、キッチンや調理器具を分ける必要はありますか
必ず分ける必要はありません。観光庁のガイドでは、肉類などの成分が混ざらないよう、調理器具をしっかり洗っておくことが重要だとしています。分けていない場合は、そのことをポリシーに書いておけば、お客様が判断できます。
Q. 魚を具に使わなければ、かつおの出汁は使ってもいいですか
ベジタリアン・ヴィーガン向けの料理には使わないでください。観光庁のガイドは、調理方法にかかわらず、かつおなど動物由来の出汁は避けられるとしています。昆布やきのこなど植物由来の出汁に替えます。
Q. ムスリムの方を受け入れるには、ハラール認証が必要ですか
必要ではありません。観光庁のガイドは、日本に旅行に来るムスリムで認証まで求める人は少ないとしています。豚とアルコール(みりんを含む)を使っているかを書いて見せる情報開示から始めます。
Q. ベジタリアン対応のメニューは、グルテンフリーにする必要がありますか
必要ありません。観光庁のガイドは、ベジタリアンの方が食べられるかどうかと、グルテンの有無には関係がないとしています。オーガニックや添加物の有無も別の話です。
まとめ
ベジタリアン・ヴィーガン・ハラールへの対応は、認証や専用キッチンから始めるものではありません。人気のメニューを1品、出汁とみりんと具を置き換えて共通で食べられる形にし、何を使っているかをポリシーにして見せる。そこまでなら、今の厨房で始められます。
ご相談でよく迷われるのは、どの料理を置き換えるか、ポリシーにどこまで書くかです。私たちは、メニューと仕入れている調味料を一緒に見ながら、置き換えやすい1品と、正直に書ける対応の範囲を決めていきます。今のメニューのままで書いて見せるだけで十分な場合は、そうお伝えします。
食事の制限がある外国のお客様の受け入れでお困りのときは、インバウンド集客のご相談からお気軽にご連絡ください。飲食店向けの支援は飲食店のインバウンド集客支援のページに、今の状況を整理したいときは無料診断もご利用いただけます。
この記事の監修者
出典
- 観光庁「ベジタリアン・ヴィーガン/ムスリム旅行者おもてなしガイド」(令和6年4月。旅行時の行動の数字は2023年12月のウェブアンケート調査、口コミサイトの掲載数は2024年2月時点。2026年10月2日取得)
- 公益財団法人東京観光財団「インバウンド対応力強化支援事業補助金」(2026年10月2日取得)
- 写真:Studio Stock



