
「美容室にも外国のお客様は来るのか」というご相談を、美容室やネイルサロンの方からいただきます。結論から言うと、需要はあります。ただ、飲食や買い物に比べると、まだ一部の方しか使っていない分野です。観光庁の調査では、ネイルやエステ、リラクゼーションなどにお金を使った人は全体の4.4%でした。
この記事では、観光庁の「インバウンド消費動向調査」の集計表から、美容やリラクゼーションにお金を使っているのはどの国の方かを確かめます。そのうえで、インバウンドの方々が日本の美容室に何を期待していて、どこで予約をあきらめているのかをまとめました。
美容室やネイルは、観光庁の統計でどこに入っているか

観光庁の「インバウンド消費動向調査」では、旅行中に使ったお金を、宿泊費・飲食費・交通費・娯楽等サービス費・買物代に分けて集計しています。美容室やネイルサロンの売上は、このうちの娯楽等サービス費に入ります。2025年の娯楽等サービス費は4,236億円で、旅行中に使われたお金全体の4.5%でした。
娯楽等サービス費の中は、さらに細かく分かれています。調査の定義では、ネイルサロンやエステティックサロンは「温泉・温浴施設・エステ・リラクゼーション」に、理容店や美容院は「その他娯楽等サービス費」に入ります。
ここで気をつけたいのは、美容室だけを取り出した数字はないということです。「温泉・温浴施設・エステ・リラクゼーション」には温泉やスパも、「その他娯楽等サービス費」には映画館やクリーニングなども一緒に入っています。この記事では、美容に近い費目の数字を目安として読み、足りない部分ははっきり分けて書いていきます。
どの国の方が、滞在中に美容やリラクゼーションにお金を使っているか
2025年の集計表で、「温泉・温浴施設・エステ・リラクゼーション」にお金を使った人の割合を国ごとに見ると、差がはっきり出ます。高いのは欧米とオーストラリアの方です。フランスは10.3%で、カナダ8.4%、ドイツ8.2%、オーストラリア8.1%と続きます。全体の4.4%と比べると、およそ2倍です。
同じ国の方は、滞在も長くなっています。平均の泊数は、フランス18.4泊、ドイツ18.0泊、英国14.4泊、米国12.0泊で、全体の9.5泊より長めです。2週間を超える旅行なら、途中で髪を整えたり、爪を手入れしたりしたくなる場面も出てきます。滞在が長い方ほど、旅の途中で美容室やサロンに寄る理由があると考えられます。
もうひとつ目を引くのが韓国です。平均の滞在は4.0泊と短いのに、お金を使った人は5.9%と全体より高くなっています。短い旅行の中でも、あらかじめ予定に入れて来ている方がいると読めます。国ごとの旅の特徴は、欧米やオーストラリアの観光客の記事と韓国人観光客の記事にまとめています。
なお、美容院が入る「その他娯楽等サービス費」は、全体で5.3%の人がお金を使っていました。費目の中身が広いので、この数字だけでは美容院の利用は分かりません。国ごとの割合は、使った人の数が少ない国もあるため、傾向をつかむ目安として見てください。
インバウンドの方々が、日本の美容室に期待していること

東京都は、美容室の技術を観光の資源として扱い始めています。令和8年度に募集している「多様な体験型観光推進事業補助金」の案内には、「東京の美容室等の高い技術を新たな観光資源とする取組を支援します」と書かれています。対象の美容体験型観光サービスは、ヘアカット、ネイル、メイクなどを、外国人旅行者向けの体験として出すものと定められています。
インバウンドの方々が求めているのは、特別な観光向けのメニューだけではありません。観光庁の同じ調査の年次報告書では、「日本の日常生活体験」をした人の97.2%が満足したと答えていて、調査で挙げられた体験の中でいちばん高い割合でした。日本の人がふだん受けているカットやシャンプー、ネイルを、同じように受けてみること自体が、旅の楽しみになります。技術がなぜ旅行者に選ばれるのかは、日本の技術とインバウンドの記事で詳しく書いています。
ですから、美容室の側で用意するのは、新しい観光メニューより、いつものメニューを外国の方が選べて、安心して受けられる形です。旅の記念になるヘアセットや、仕上がりを見せる体験に広げたいときは、体験メニューの作り方の記事が参考になります。
需要があっても、予約までたどり着かない理由

需要があっても、予約が入らなければお店の売上にはなりません。美容室の場合、インバウンドの方々が途中であきらめる場面は、たいてい予約の前にあります。
いちばん多いのは、予約ページやお店の案内が日本語だけで、予約の取り方が分からないことでしょう。飲食店なら当日ふらりと入れても、美容室は時間を決めて席を取る仕事です。予約ページにたどり着いても、メニューの名前やオプションが読めなければ、そこで手が止まります。
次に多いのが、料金がいくらになるのか分からないことです。日本の美容室では、指名料や髪の長さによる追加料金、シャンプーやブローの有無で総額が変わることがあります。日本の人には見慣れた書き方でも、外国の方には最終的な支払額が読めません。税込みの総額と、追加でかかる条件を外国語で書いておくだけで、迷う人は減ります。
もうひとつは、カウンセリングで希望が伝わるかという不安です。髪の仕上がりは、言葉の行き違いがそのまま結果に出ます。写真を見せて希望を伝えられること、スタッフが指さしで確認できるメニュー表があることを、予約の前から分かるようにしておくと安心してもらえます。
東京都の補助金も、対象の要件に「外国人旅行者の集客から美容体験型観光サービスの提供まで、一連の受入体制が整備されること」を挙げています。見つけてもらってから支払いを終えるまでの流れのどこか1か所で止まると、需要は売上に変わりません。どの枠でどのメニューを受けるかの決め方は、美容室のインバウンド集客の始め方の記事にまとめています。
Point美容室のインバウンド需要は、来たい人がいないことより、予約の前で止まっていることのほうが多い。
お店で決めること、外に頼むと早いこと

どの時間帯なら外国の方を受けられるか、どのメニューなら言葉が少なくても仕上がりを約束できるかは、お店の方にしか決められないことです。担当できるスタッフと、お断りする施術もあわせて決めておきます。
一方で、決めたことを外国語の予約ページやGoogleマップに載せる作業や、料金表を外国の方に読める形に直す作業は、外に頼むほうが早く形になる部分です。来店後の口コミを外国語で集める流れも、最初の形を作ってしまえばお店で回せます。口コミの頼み方は外国の方の口コミの記事に書きました。
東京都内の美容室なら、予約システムや外国語のホームページ、店内表示の多言語化に、美容室向けの東京都の補助金を使える場合があります。申請の締切は令和8年11月30日(月)必着で、予算に達すると締切の前でも受付が終わります。
よくある質問
Q. 美容室のインバウンド需要だけを示した統計はありますか
観光庁の「インバウンド消費動向調査」では、美容院は「その他娯楽等サービス費」に、ネイルサロンやエステは「温泉・温浴施設・エステ・リラクゼーション」に含まれていて、美容室だけを取り出した数字はありません。近い費目の数字を目安にして考えます。
Q. どの国のお客様を意識すればいいですか
2025年の集計表で、ネイルやエステ、リラクゼーションなどにお金を使った人の割合が高いのは、欧米やオーストラリアの方です。フランスは10.3%、カナダは8.4%、ドイツは8.2%でした。韓国の方も、平均4.0泊の短い滞在で5.9%と全体の4.4%を上回っています。実際に来ている国は、お店の予約や会計の記録で確かめてください。
Q. 英語が話せなくても、外国の方を受けられますか
受けられます。メニューと税込みの総額、追加料金の条件を外国語で読めるようにしておき、写真や指さしで希望を確かめられる用意があれば、会話が少なくても施術は進められます。
まとめ
美容室やサロンにも、インバウンドの需要はあります。ネイルやエステ、リラクゼーションなどにお金を使う人は、滞在の長い欧米やオーストラリアの方に多く、韓国の方も短い旅の中で利用しています。ただ、全体ではまだ4.4%で、予約ページや料金、カウンセリングのどこかで止まっているお店が少なくありません。
ご相談で迷われるのは、需要があるかどうかより、いまの予約の流れのどこで外国の方が止まっているかのほうです。私たちは、予約ページと料金表、来店後の流れを一緒に見て、最初に直す1か所を決めます。今の受け入れの数で十分に回っているなら、手を広げなくていいとお伝えすることもあります。
美容室やサロンのインバウンド集客でお困りのときは、インバウンド集客のご相談からご連絡ください。支援の内容は美容室のインバウンド集客支援のページにまとめています。
この記事の監修者
出典
- 観光庁「インバウンド消費動向調査 2025年 集計表(暦年・確報)」(表2-1 費目別購入率、表4-1 平均泊数。2026年9月30日取得)
- 観光庁「インバウンド消費動向調査 2025年 年次報告書」(費目の定義、図表6-2。2026年9月30日取得)
- 観光庁「インバウンド消費動向調査 2025年暦年の調査結果(確報)の概要」(費目別の旅行消費額。2026年9月30日取得)
- 東京都産業労働局「多様な体験型観光推進事業補助金」(事業の趣旨・補助対象・要件・締切。2026年9月30日取得)
- 写真:Studio Stock



