
美容室のインバウンド集客を調べると、多言語対応やSNS、予約サイトへの登録など、飲食店向けと変わらない話がたくさん出てきます。ところが美容室でそのとおりに進めると、たいてい予約のところで止まります。1人のお客様で席が何時間も埋まり、言葉の行き違いが仕上がりにそのまま出る仕事だからです。
美容室の場合は、どの枠でどのメニューを受け、何をお断りするかを、人を呼ぶ前に決めておくとあとが楽になります。その決め方と、決めたことを予約ページやGoogleマップにどう書くか、受けるかどうかの目安までを順にまとめました。
美容室が、飲食店と同じやり方では進みにくい理由

飲食店なら、空いている席にそのまま案内できます。美容室はそうはいきません。1人のお客様で、その席が1〜3時間埋まります。
旅行中の方は、そのあとの予定も詰まっています。何時に終わるか分からないメニューは選ばれにくく、遅れや当日のキャンセルも出やすくなります。
言葉の問題もあります。飲食店で注文を取り違えても、1皿作り直せば済みます。美容室で希望を聞き違えると、仕上がりはやり直せません。それがそのまま、低い評価の口コミになります。
ですから美容室では、集客を始めてから受け方を考えるのでは遅いのです。受け方を先に決めて、そのあとで人を呼びます。
Point集客を始める前に、受ける枠とメニューを決めておきます。
先に決めておく、予約枠とメニュー
決めておくのは、受け入れる予約枠と、外国語で出すメニュー、それにできないことの3つです。どれも紙1枚にまとまる量です。
受け入れる予約枠
曜日と時間帯、1日に受ける上限を決めます。常連のお客様の予約を圧迫しない範囲で、たとえば「平日の午前、1日2枠まで」くらいから始めると無理がありません。外国語の予約ページには、決めた枠だけを出します。
外国語で出すメニュー
すべてのメニューを出す必要はありません。所要時間が読めて、言葉の行き違いが起きにくいものから選びます。カットやブロー、ヘッドスパのように、時間と仕上がりを自信を持って伝えられるメニューが向いています。
縮毛矯正やブリーチは、髪の履歴を細かく確かめる必要があり、時間も読みにくい施術です。最初は外しておいたほうが安心です。料金は税込みの総額で書き、追加料金がかかる条件も一緒に書いておきます。
できないこと
いちばん効くのが、実はこれです。会話は翻訳アプリで行うことや、受けていない施術、使えない支払い方法を書き出します。キャンセルの決まりも添えて、予約の前に見える場所に書いておきます。お客様は分かったうえで予約してくれるので、来店してから話が食い違うことが減ります。
予約ページやGoogleマップへの書き分け

枠とメニューが決まってしまえば、集客の作業は、決めたことを載せる場所ごとに書き分けるだけになります。場所によって役割が違うので、同じ文章をすべてに載せる必要はありません。
| 載せる場所 | 役割 | 書くこと |
|---|---|---|
| Googleビジネスプロフィール | 見つけてもらう入口 | 対応できる言語や営業時間、主なメニューと料金を載せ、予約ページへのリンクを置く。外国語の口コミには返信する |
| SNS | 仕上がりを見てもらう | 施術例の写真を中心に。文章は短くして、予約ページへ案内する |
| カウンセリングシート | 施術の前に希望を確かめる | 髪の履歴、希望、避けたいことを選ぶ形で聞く。仕上がりのイメージ写真も見せてもらう |
| 外国語の予約ページ | 決めた枠の受付窓口 | 決めた枠とメニューだけを載せる。所要時間と税込みの総額、できないこと、キャンセルの決まりも書く |
英語だけで足りるかどうかは、どの国の方が来ているかで変わります。まだ分からない場合は、お店に来ている外国人の国の調べ方を先に確かめてください。外国語の口コミへの返信は、書く人によって内容が変わると評価に響きます。返信の決め方は口コミ返信を、誰が書いても同じ質にする仕組みにまとめています。
最初は手を付けなくていいこと

インバウンド対策として紹介される項目の多くは、始めの段階では要りません。
たとえば、たくさんの言語への対応です。来ている国が分からないうちは、英語だけで始めます。言語を増やすのは、実際の予約の記録がたまってからで間に合います。
予約サイトにいくつも登録するのも、最初は控えたほうがいいでしょう。複数に出すと同じ枠が二重に埋まり、お断りの連絡が増えます。まずは1つに絞ります。
外国語を話せるスタッフを採用しなくても、カウンセリングシートと翻訳アプリで施術はできます。満足度を左右するのは、会話の力より、事前に決めて書いてあることのほうです。インバウンド向けに新しいメニューを作る必要もなく、今あるメニューから選ぶだけで始められます。
東京都の美容室向け補助金
東京都は、美容室やネイル・メイクのサロンがインバウンドの方々向けのサービスを始める費用を補助する「多様な体験型観光推進事業補助金」を募集しています。補助は費用の3分の2、上限は200万円で、締切は令和8年11月30日必着です。予算に達すると、締切の前でも受付が終わります。
事業計画には、店内の受け入れ体制と外国人旅行者向けの広報の方針を書く必要があります。先に枠とメニューを決めておくと、ここが書きやすくなります。何を申請に入れて何を外すか、締切までにどう動くかは、多様な体験型観光推進事業補助金を、美容室はどう使うかで詳しく書いています。
インバウンドを受けるかどうかの目安

そもそも受けるかどうかも、感覚ではなく数字で決められます。月の予約や問い合わせの件数、いつものお客様と比べた客単価、1人あたりの所要時間を見てください。
| お店の状態 | 判断の目安 | やること |
|---|---|---|
| 問い合わせがほとんど無い。いつものお客様で予約が埋まっている | 当面は受けない | Googleビジネスプロフィールの情報だけ整えて、様子を見る |
| 常連のお客様の予約を断り始めている | 受け方を見直す | 枠を減らすか、常連のお客様を優先する時間帯を分ける |
| 問い合わせが月に10件を超え、客単価もいつもより高い | 積極的に受ける | 枠を広げ、カウンセリングシートを整える |
| 問い合わせが月に数件あり、客単価はいつもと同じか高い | 枠を決めて受ける | 枠・メニュー・できないことを決めて、外国語の予約ページに出す |
この目安は私たちが支援の中で使っているもので、どのお店にも当てはまる基準ではありません。ただ、数字にしておかないと、受けるかどうかがその日の忙しさで決まってしまいます。まずは、月に何件の問い合わせがあるかを数えるところからで十分です。
よくある質問
Q. 英語が話せなくても、インバウンドの方を受けられますか
受けられます。英語のカウンセリングシートを用意し、会話は翻訳アプリで補えば施術はできます。会話の力より、予約枠やメニュー、できないことを事前に決めて書いてあるかどうかが、仕上がりと満足度を左右します。
Q. 外国語の予約サイトは、いくつ登録すればいいですか
最初は1つに絞りましょう。お店の予約台帳と枠をそろえられるものを選びます。複数に登録すると同じ枠が二重に埋まり、お断りの連絡が増えます。
Q. 料金は、日本人のお客様と同じでいいですか
同じで構いません。ただし、説明やカウンセリングで時間が延びるメニューは、その時間も含めた料金にしておきます。表示は税込みの総額にしてください。
Q. 東京都の補助金は、ホームページの多言語化だけでも申請できますか
東京都の申請FAQでは、申請する経費はホームページの多言語化だけでも構わないとされています。ただし事業計画には、店内の受け入れ体制や外国人旅行者向けの広報について、今の状態とこれからの方針を書く必要があります。
まとめ
美容室のインバウンド集客は、受け入れる予約枠と外国語で出すメニュー、できないことを決めるところから始めると進めやすくなります。決まってしまえば、あとは載せる場所ごとに書き分けるだけです。
ご相談を受けていていちばん時間がかかるのは、枠やメニューを絞るところです。毎日予約を回している方にとって、枠を絞ることはお客様を断ることに見えます。常連のお客様の顔が浮かぶほど、決めにくくなるものです。私たちは、今の予約の入り方と客層を見ながら、どの枠とメニューから始めるかを一緒に決めます。数字によっては、いまは受けなくていいとお伝えすることもあります。
問い合わせの件数を数えるところから一緒に整理するなら、無料診断でご相談いただけます。サロン向けの支援内容は美容室・サロンのインバウンド集客のページにまとめています。
この記事の監修者
出典
- 東京都産業労働局「多様な体験型観光推進事業補助金」(2026年9月29日取得)
- 東京都産業労働局「多様な体験型観光推進事業補助金 募集要領」(2026年9月29日取得)
- 東京都産業労働局「多様な体験型観光推進事業補助金 申請FAQ」(2026年9月29日取得)
- 受け入れるかどうかの目安の表は、支援の中で使っている実務上の目安です
- 写真:Studio Stock



