
インバウンド対策と聞くと、多言語化やキャッシュレス、SNSなど、やることが次々に並びます。けれども小さなお店が全部を一度にそろえる必要はなく、お客様がつまずいているところから手をつければ足ります。
観光庁の調査では、インバウンドの方々が旅行中に困った場所として、「飲食店」が上位に挙がる項目がいくつもあります。この記事では、インバウンド対策という言葉が何を指すのかを整理したうえで、お店が最初に手をつけるところの決め方をまとめました。
インバウンド対策という言葉が指すもの

インバウンド対策は、ひとつの作業の名前ではありません。お客様がお店を知ってから、来店し、支払いを終えるまでの流れのうち、インバウンドの方々が困りやすいところを先回りして整えることをまとめて呼んでいます。
お店の側から見ると、中身は次の4つの面に分けられます。
| 面 | 中身の例 |
|---|---|
| 見つけてもらう | Googleマップの店舗情報、ホームページ、予約サイト、SNS |
| 言葉 | メニューや店内の案内、注文や会話の手段 |
| 支払い | クレジットカードやキャッシュレス決済、使える支払い方法の表示 |
| 受け入れ | 予約の受け方、席や時間の決まり、できないことの案内 |
やることの一覧だけを見ると大がかりに感じます。ただ、どの面もお店によって困り具合が違うので、全部が同じ重さで必要になるわけではありません。
インバウンドの方々が、お店で困っていること

観光庁が毎年行っている「訪日外国人旅行者の受入環境整備に関するアンケート」を見ると、お店で起きている困りごとは、言葉と支払いに集中しています。令和7年度の調査は、2025年11月から2026年1月に、成田・羽田・関西・福岡・新千歳の5つの空港で、出国前の旅行者4,110人に聞いたものです。
| 旅行中に困ったこと | 困った人の割合 | 困った場所で多かったところ |
|---|---|---|
| 施設等のスタッフとのコミュニケーション | 15.4%(2位) | 飲食店 38%(最多) |
| 多言語表示の少なさ・わかりにくさ | 10.9%(5位) | 鉄道駅構内と飲食店が 24%で並んで最多 |
| クレジット/デビットカードの利用 | 10.7%(6位) | 飲食店 32%(最多) |
表の数字は、困ったと答えた人の中での割合です。会話と支払いのどちらでも、困った場所の最多は飲食店でした。クレジット/デビットカードの利用で困った人の割合は、令和5年度から上がり続けています。
一方で、会話に困ったときの対応は、スタッフか旅行者のどちらかが翻訳アプリなどを使った、が68%でした。会話そのものは、翻訳アプリでかなり補われているということです。お店が先に整えたいのは、アプリだけでは埋まらない部分、つまりメニューの中身や支払い方法のように、見てすぐ分かってほしい情報のほうです。
最初に手をつけるところの決め方
どこから始めるかは、お客様がたどる順に、どこで止まっているかを確かめて決めます。見つけてもらえていないお店がメニューを翻訳しても、読む人がいません。反対に、来店は増えているのに注文や支払いでもたつくお店なら、集客より先に店内を整えたほうが効きます。
止まっているところを知るには、まずどの国の方がどのくらい来ているかを数えるところからです。来ている国によって、必要な言語も、よく使われる支払い方法も変わります。調べ方はお店に来ている国の調べ方の記事にまとめています。
Pointインバウンド対策は、全部をそろえるより、お客様が止まっているところを1か所ずつ直していく。
小さなお店が、まずそろえておきたいこと

来ている国と止まっているところが分かったら、次のようなお金をあまりかけずに始められることから手をつけます。
ひとつは、メニューの中身が伝わることです。料理名を訳すだけでは、何の料理で、自分が食べられるかどうかが分かりません。写真と、主な材料、食べられない人がいる材料を書いておくと、注文のときの会話が減ります。作り方は多言語メニューの記事で詳しく書きました。
次に、使える支払い方法を、入口と予約ページに書いておくことです。調査でカードの利用に困った場所の最多が飲食店だったように、払えるかどうかが分からないこと自体が、入店をためらわせます。まだカードに対応していないお店も、「現金のみ」と書いておくだけで、店内での行き違いを防げます。
もうひとつは、Googleマップの店舗情報をそろえることです。営業時間や定休日、予約の要否、対応できることまで書いてあれば、来る前に分かることが増えます。ホームページとどちらを先に直すかは、Googleビジネスプロフィールとホームページの記事を参考にしてください。
最初からやらなくていいこと

インバウンド対策として紹介されることの中には、始めの段階では後回しにしてよいものもあります。
たとえば、たくさんの言語への対応です。来ている国が分からないうちに言語を増やしても、使われない翻訳が残るだけです。まずは英語と、実際に多い国の言語からで足ります。外国語を話せるスタッフの採用も、会話の多くが翻訳アプリで補われている今は、急ぐ理由が少なくなっています。
SNSを国ごとに始めることや、高価な機器をそろえることも同じです。どこで止まっているかが分かる前に大きな費用をかけると、効いたかどうかも判断できません。小さく始めて、来ている方の反応を見てから広げるほうが、結果として無駄が出ません。
費用が大きくなる取り組みは、補助金を使える場合があります。東京都内のお店向けの制度は、東京のインバウンド補助金の記事で紹介しています。
よくある質問
Q. インバウンド対策は、何から始めればいいですか
お店にどの国の方がどのくらい来ているかを数えるところからです。そのうえで「見つけてもらえているか」「来たときに困らせていないか」の順に、止まっているところを確かめて直します。
Q. 英語が話せなくても、インバウンドの方を受け入れられますか
受け入れられます。観光庁の令和7年度の調査では、会話に困ったときに翻訳アプリなどを使って対応した人が68%でした。メニューや支払い方法のように、見てすぐ分かってほしい情報を先に整えておくと、会話が少なくても困らせずに済みます。
Q. キャッシュレス決済には、必ず対応しないといけませんか
必ずではありません。ただ、観光庁の調査では、クレジット/デビットカードの利用に困った場所の最多は飲食店(32%)でした。すぐに対応できない場合も、使える支払い方法を入口と予約ページに書いておくと、店内での行き違いを防げます。
Q. インバウンド対策に使える補助金はありますか
地域によってはあります。東京都内のお店なら、東京観光財団の補助金で多言語化やキャッシュレス決済の導入費用の一部が補助される場合があります。詳しくは東京のインバウンド補助金の記事をご覧ください。
まとめ
インバウンド対策は、見つけてもらう・言葉・支払い・受け入れという面の集まりです。小さなお店が全部を一度にそろえる必要はありません。来ている国を数え、お客様がたどる順に、止まっているところから直していけば十分です。
実際にご相談を受けていると、迷うのは「何をするか」より「どれを後回しにするか」のほうです。多言語化もキャッシュレスもSNSも、どれも必要そうに見えるからです。お店の客層と来店の数字を見ながら、どこから手をつけ、何をいったん置いておくかを一緒に決めるのが、私たちのお手伝いできるところです。見た結果、いまは大きく手を入れなくてよいと考えれば、そうお伝えします。
お店の状況に合わせた順番を知りたいときは、無料診断からご相談ください。インバウンドの集客支援の内容はインバウンド集客支援のページにまとめています。
この記事の監修者
出典
- 観光庁「訪日外国人旅行者の受入環境に関する調査を実施しました」(2026年4月28日)(2026年9月30日取得)
- 観光庁「令和7年度 訪日外国人旅行者の受入環境整備に関するアンケート 調査結果」(令和8年4月)(2026年9月30日取得)
- 写真:Studio Stock



