
多言語メニューは、料理名を訳す前に、1品ごとに「何の料理か」と「食べられるかどうか」を決めておくと、ぐっと選ばれやすくなります。訳す作業は最後で構いません。
この記事では、メニュー1品に何を書くか、見落としやすい材料の確かめ方、どの料理から訳すかを書きます。観光庁のガイドなどを参考にしています。
訳しただけのメニューで、料理が選ばれない理由
「親子丼」を機械翻訳にかけても、鶏肉と卵の丼だということまでは伝わりません。訳語から中身が分からない料理は、なかなか頼まれません。インバウンドの方々は、何の料理か分からないものより、写真で見当がつく料理や知っている料理を選びがちです。
メニューを見る人が知りたいことは、国を問わずほぼ同じです。何が入っているのか、自分が食べられるものか、辛いか、いくらか。そこが書いてあれば、知らない料理でも頼んでもらえます。
✕ 直訳だけ
何の料理か分からず、頼まれない
○ 情報つき
中身と、食べられるかどうかが分かる
作る順番は、まず訳す料理を選び、厨房で材料を1品ずつ確かめます。載せる情報を書いたら、最後に訳して、人に確かめてもらいます。
Point料理名を訳す前に、1品ごとに「何の料理か」と「食べられるかどうか」を決めておきます。
メニュー1品ごとに書いておくこと

1品ごとに載せる情報は5つです。料理名と中身、食べられるかどうか、辛さや生ものの有無、それに価格です。日本語の料理名はローマ字で残し、後ろに英語の説明を添えます。名前が残っていれば、注文のときにメニューを指さして伝えることもできます。
| 項目 | 書き方 | 例(親子丼) |
|---|---|---|
| 料理名 | 日本語の名前をローマ字で残し、短い説明を添える | Oyakodon — chicken & egg rice bowl |
| 中身 | 主な材料と調理法を1行で書く | Simmered chicken and egg over rice |
| 辛さ・生もの | 辛いか、生や半熟のものが入っているかを書く | Not spicy / Soft-cooked egg |
| 価格 | 税込かどうかも合わせて書く | 1,200 yen (tax included) |
| 食べられるかどうか | 豚肉、アルコール、動物性のだし、主なアレルギー物質が入っているかを書く | No pork / Contains egg, wheat, soy / Dashi: bonito (fish) |
いちばん大切なのは、表の最後の行です。宗教や体質で食べられないものがある方にとっては、味の説明より先に知りたいことだからです。料理の説明が短くても、この行があれば選ぶ判断ができます。
アレルギーの表示が法律で義務づけられているのは、容器包装された加工食品です。2026年4月には、カシューナッツが特定原材料に加わりました。お店で出す料理に同じ義務はありませんが、主なアレルギー物質を書いておけば、お客様が自分で判断できます。消費者庁も、外食での情報提供を進めるための教材を出しています。
だしやみりんなど、見落としやすい材料

野菜だけの料理に見えても、中身まで確かめると食べられない方がいます。見落とされやすいのは、だしやみりん、醤油、それに豚由来の材料です。
観光庁のガイドは、かつおなど動物由来の食材でとっただしは、ベジタリアンの方に避けられると説明しています。昆布やきのこのだしに替えられるかどうかも、厨房で確かめておくとよいでしょう。
多くのムスリムの方は、みりんを含む酒を口にしません。醤油に含まれる微量のアルコールを避ける方もいます。豚肉だけでなく、ラードやゼラチン、豚に由来するショートニングや乳化剤も対象になります。
ガイドには、天丼の衣から卵を外し、だしを昆布ときのこに、みりんを糖類に替えて「野菜天丼」にする例が載っています。1品を替えるだけで、一般のお客様もベジタリアン・ヴィーガンの方もムスリムの方も、同じ料理を頼めるようになります。
対応できないことも書いておく
すべてに対応する必要はありません。観光庁のガイドも、厳格に対応しているかどうかより、対応している内容をはっきり示すことが大切だとしています。示し方として挙げているのは、店頭への掲示やSNSへの投稿です。
たとえば「だしにはかつおを使っています」「豚肉を使わない料理でも、同じ調理場で調理しています」と一文あれば、合わない方は来店前に判断でき、合う方は安心して来られます。来店してから断るより、先に書いておくほうがお互いに楽です。
どの料理から訳すか

載せる料理は、よく注文される料理とおすすめから選びます。品数を絞ったほうがお客様は選びやすく、価格やメニューが変わったときに直す手間も少なく済みます。
置き場所によっても、向いている内容と直しやすさが違います。
| 置き場所 | 向いている内容 | 直しやすさ |
|---|---|---|
| 紙のメニュー | 店内で見るもの。写真と料理名、価格 | 低い。刷り直しが必要 |
| お店のホームページ | 全品の説明、アレルギー物質、だしや調味料の詳しい情報 | 高い。検索やAIにも読まれる |
| Googleビジネスプロフィール | 主な料理と価格、料理の写真。来店前に見られる | 高い。すぐに差し替えられる |
来店前に見られるのは、Googleマップのお店の情報です。紙のメニューに凝るより先に、外国語のメニューをGoogleビジネスプロフィールとホームページに載せておくと、お店を探している段階で選ばれやすくなります。どの言語から用意するかは、お店に来ている国の調べ方を読むと決めやすくなります。
訳したあとの確かめ方
機械翻訳を使うこと自体は問題ありません。ただ、そのまま載せるのは避けてください。訳した文を日本語に戻してみると、意味が変わっている箇所が見つかります。できれば、その言語を話す人にも見てもらいます。常連のお客様やスタッフの知り合いに頼めることもあります。
料理名は、直訳すると誤解を招くことがあります。料理名と、食べられるかどうかの行だけは、必ず人の目を通してください。
最初からやらなくていいこと

全品を訳す必要はありません。全品を訳すと、変更のたびに全言語を直すことになります。よく注文される料理とおすすめで足ります。
多くの言語を一度にそろえるのも、後回しで大丈夫です。まず英語で作り、来ている国の割合を見てから言語を足していきます。
認証を先に取る必要もありません。観光庁のガイドは、ハラール認証は必須ではなく、求めるかどうかはお客様ごとに違うと説明しています。対応している内容を書いて示すところから始められます。
凝った紙のメニューも、急いで作らなくて大丈夫です。価格を改めるたびに刷り直しになるので、直しやすいホームページやGoogleビジネスプロフィールを先に整えます。
よくある質問
Q. 英語のメニューだけで足りますか
最初は英語だけで始めて構いません。来ている国の割合が分かってから、割合の大きい国の言語を足します。
Q. 機械翻訳で作ってもいいですか
使って構いません。訳した文を日本語に戻して意味を確かめ、料理名と食べられるかどうかの部分は、その言語を話す人に見てもらいます。
Q. ハラール認証がないと、ムスリムの方に案内できませんか
認証は必須ではありません。豚肉やアルコールを使っているかどうかなど、対応している内容をメニューや店頭に書いておけば、お客様が自分で判断できます。
Q. 飲食店のメニューにアレルギー表示は義務づけられていますか
アレルギー表示が義務づけられているのは容器包装された加工食品で、店で出す料理に同じ義務はありません。それでも、主なアレルギー物質を書いておくと、お客様が食べられるかどうかを判断できます。
まとめ
多言語メニューは、料理名を訳す前に、1品ごとに「何の料理か」と「食べられるかどうか」を決めてから作ります。だしやみりん、豚由来の材料を確かめ、よく注文される料理から順に載せていけば、全品を訳さなくても選ばれるメニューになります。
ご相談を受けていて手が止まりやすいのは、たれやだしの中身をどこまで書くかを決めるところです。毎日作っている料理ほど、当たり前すぎて書くべきことに気づきにくくなります。対応できないことをどう書くかも、お店の中だけでは決めにくい部分です。厨房で材料を一緒に確かめ、どの料理に何を書くかを決めるのが、私たちのお手伝いできるところです。いまの紙のメニューに数行足せば十分、ということもあります。
いまのメニューに何が足りないかの確認からでしたら、無料診断でご相談いただけます。飲食店向けの支援内容は飲食店のインバウンド集客にまとめています。
この記事の監修者
出典
- 消費者庁「食物アレルギー表示に関する情報」(2026年4月1日更新)(2026年9月27日取得)
- 消費者庁「外食・中食における食物アレルギーに関する情報提供の取組」(2026年9月27日取得)
- 観光庁「ベジタリアン・ヴィーガン/ムスリム 旅行者おもてなしガイド」(令和6年4月)(2026年9月27日取得)
- 写真:Studio Stock



