
外国のお客様に来てほしいけれど、英語が話せないから不安だという飲食店は少なくありません。けれども、入店から会計までの接客は、単語と指さし、それにメニューや紙に書いておいた案内で、ほとんど回ります。観光庁の調査でも、スタッフとの会話が便利だったと答えた人の半分は、その理由に翻訳の道具や指さし会話シートを挙げていました。
この記事では、入店から会計までの場面ごとに、そのまま使える単語と短い英語をまとめました。アレルギーの確認のように、言葉だけに頼らないほうがよい場面は別の記事で扱います。
インバウンドの方々は、飲食店の会話で何に困っているのか
観光庁が令和7年度に空港で旅行者4,110人に聞いた調査では、旅行中に困ったことの2番目が「施設等のスタッフとのコミュニケーション(英語が通じない等)」で、15.4%でした。困った場所をたずねると、飲食店が38%でいちばん多く挙がっています。会話で困る場面がいちばん多いのは、飲食店です。
ただ、困った人の68%は翻訳アプリなどを使って伝え合っていて、会話をあきらめた人は31%でした。スタッフとの会話が便利だと感じた人に理由を聞くと、英語などを話せたが66%、通訳機器・タブレット・指さし会話シートなどを使えたが51%です。流暢に話せるかどうかより、伝わる手段がお店に用意されているかどうかで、お客様の感じ方は変わります。
Point外国のお客様との会話は、英語が話せるかより、単語と指さしで伝わる準備がお店にあるかで決まる。
入店から席に着くまでに確かめること

入口で確かめることは、人数と席の種類、それに待ち時間くらいです。人数は指で示してもらうのがいちばん早く、「How many?」と聞きながら指を立てれば伝わります。カウンターかテーブルかは、席を指して「Counter? Table?」と聞きます。
満席のときは、待ち時間を伝える場面で困りがちです。待ち時間や、名前を書いて待つ仕組みは、口で説明するより入口に書いておくほうが確実です。「Please write your name」「About 20 minutes」のような短い英語を紙に書いておけば、その場では指さすだけで済みます。現金だけのお店や、席の時間に制限があるお店は、それも入口に書いておきます。
注文を、メニューの番号と写真で受ける仕組み

注文でいちばん頼りになるのは、メニューです。料理に番号と写真が付いていれば、お客様は指さすか番号を言うだけで注文でき、お店の人は「This one?」「Number 3?」と確かめるだけで済みます。注文の会話を減らす準備は、英語の練習より先に、メニューでできます。外国語のメニューの作り方は、多言語メニューの記事にまとめました。
観光庁が公開している「コミュニケーションシート」も使えます。ペンや指でおさえて使う会話シートです。英語や中国語、韓国語などの版があり、自由に使えるとされています。英語版の「レストラン・食堂」のページには、人数や、子ども連れかどうか、食事の制限やアレルギーがあるかを指さしで確かめる欄があります。
注文を受けたら、最後に「Anything else?」と聞きます。数は指で、確認は品名か番号をくり返す形で十分です。
おすすめと食べ方を、書いて伝える準備

会話が長くなりやすいのは、おすすめを聞かれたときと、食べ方を伝えたいときです。どちらも毎回同じことを話すので、一度、短い英語と写真で紙にしておけば、その場では指さすだけで済みます。
おすすめは「Popular」「Recommended」と一言添えて、メニューの料理を指させば伝わります。辛さや量は「Spicy」「Big」のような単語で足ります。食べ方は、たれや薬味の使い方、熱い鍋や鉄板への注意などを、順番どおりに絵か写真で示したカードにして席に置いておきます。熱いものを出すときの「Hot!」は、口でも必ず添えます。
料理のこだわりも、メニューに一言書いておけば十分です。技術の見せ方は、日本のお店の技術の記事で書いています。
会計とお見送りで、先に見せておくこと

会計では「Check, please」と声をかけられることが多く、合計の金額はレジや電卓の画面を見せれば伝わります。つまずきやすいのは支払い方法のほうです。同じ観光庁の調査では、クレジットカードやデビットカードの利用で困った場所として、飲食店が32%でいちばん多く挙がっていました。
使えるカードやスマートフォン決済、現金だけかどうかは、入口と会計の場所の両方にマークで示しておきます。会計の場で初めて「Cash only」と知って困るお客様を減らせます。あとは「Card OK」「Receipt?」くらいの単語で、会計は終わります。
お見送りは「Thank you!」で十分です。口コミのお願いの仕方は外国の方の口コミの記事にまとめました。
場面ごとに使える、単語と短い英語

ここまでに出てきた言葉を、場面ごとにまとめました。カタカナは発音の目安です。印刷してレジの横に置いておくと、誰が接客しても同じ言葉で対応できます。
| 場面 | 日本語 | 英語(発音の目安) |
|---|---|---|
| 入店 | いらっしゃいませ | Hello!(ハロー) |
| 入店 | 何名様ですか | How many?(ハウ メニー) |
| 入店 | 20分ほどお待ちいただきます | About 20 minutes.(アバウト トゥエンティ ミニッツ) |
| 入店 | 申し訳ありません、満席です | Sorry, we’re full.(ソーリー ウィア フル) |
| 注文 | ご注文はお決まりですか | Ready to order?(レディ トゥ オーダー) |
| 注文 | こちらですか | This one?(ディス ワン) |
| 注文 | ほかにご注文はありますか | Anything else?(エニシング エルス) |
| 注文 | 売り切れです | Sold out.(ソールド アウト) |
| 説明 | 辛いです | Spicy.(スパイシー) |
| 説明 | 熱いのでお気をつけください | Hot! Be careful.(ホット ビー ケアフル) |
| 説明 | たれにつけて食べてください | Dip in the sauce.(ディップ イン ザ ソース) |
| 会計 | 現金のみです | Cash only.(キャッシュ オンリー) |
| 会計 | カードが使えます | Card is OK.(カード イズ オーケー) |
| 会計 | 領収書はいりますか | Receipt?(リシート) |
| 見送り | ありがとうございました | Thank you!(サンキュー) |
中国語や韓国語は、観光庁のコミュニケーションシートのよく来る国の版を印刷しておくと、指さしで対応できます。
単語で足りないときの助けと、外に頼むと早いこと

単語と指さしで足りないときは、翻訳アプリに切り替えます。国の研究機関である情報通信研究機構(NICT)の音声翻訳アプリ「VoiceTra」は、33言語に対応していて無料で使えます。ただし研究用のアプリとされ、NICTは同じ技術を使った民間のサービスも案内しています。お店で毎日使うなら、どのアプリを使うかを決めて、スタッフ全員の端末に入れておきます。
東京都内の飲食店なら、都の「飲食店向け多言語コールセンター」も使えます。接客中に電話でオペレーターが通訳するサービスで、英語や中国語など5言語に24時間対応し、通話料のほかは無料です。事前の申し込みが必要です。
アレルギーや食材の確認、予約の行き違いのように、間違えると困る場面は単語だけで済ませないほうが安全です。こうした場面の用意は、言葉だけに頼れない場面の記事にまとめました。
お店でできるのは、使う言葉と道具を決めてスタッフでそろえることです。外に頼むと早いのは、メニューや食べ方カードの外国語と写真づくりと、それをGoogleマップやホームページに載せる作業です。
よくある質問
Q. 英語が話せるスタッフがいなくても、外国のお客様を受け入れてよいですか
受け入れて大丈夫です。観光庁の令和7年度の調査では、スタッフとの会話が便利だった理由に「通訳機器・タブレット・指さし会話シートなどを使えた」を挙げた人が51%いました。メニューの番号と写真、指さしのシート、翻訳アプリがあれば、多くの接客は単語で回ります。
Q. 指さしで使える会話シートは、どこで手に入りますか
観光庁が「インバウンド対応能力強化教材集」のページで、英語や中国語、韓国語などのコミュニケーションシートを公開しています。自由に使えるとされているので、よく来る国の版を印刷して使えます。
Q. 翻訳アプリは何を使えばいいですか
NICTの「VoiceTra」は33言語に対応した無料のアプリですが、個人の旅行者の試用を想定した研究用とされています。お店で毎日使うなら、民間のサービスも含めて1つに決めておくと、スタッフが迷いません。
まとめ
飲食店の接客は、英語が話せなくても、単語と指さし、それにメニューや紙に書いておいた案内で、ほとんど回ります。待ち時間や食べ方、支払い方法のように毎回同じことを話す場面ほど、先に書いておくと会話が短くなります。
ご相談で迷われるのは、英語を覚えることより、どの場面を紙やメニューに任せて、どこを口で伝えるかの分け方のほうです。お店の入口から会計までを一緒に歩いて、書いておく場所と使う言葉を決めます。いまの案内で足りているなら、無理に増やさなくていいとお伝えします。
外国のお客様の接客やメニューの見せ方でお困りのときは、インバウンド集客のご相談からご連絡ください。飲食店向けの支援は飲食店のインバウンド集客支援のページにまとめています。
この記事の監修者
出典
- 観光庁「令和7年度 訪日外国人旅行者の受入環境整備に関するアンケート」調査結果(令和8年4月公表。2026年10月1日取得)
- 観光庁「インバウンド対応能力強化教材集(通訳案内士向け)」(コミュニケーションシート 英語版ほか。2026年10月1日取得)
- 国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)「VoiceTra」(2026年10月1日取得)
- 東京都産業労働局「飲食店向け多言語コールセンター」(2026年10月1日取得)
- 単語と短い英語の一覧は、支援の中で使っている実務上の例です
- 写真:Studio Stock



