
ニュースでは「インバウンドが過去最高」と聞くのに、お店のお客様はそれほど増えていない。そう感じている方は少なくないと思います。実はそれで普通で、全体の数字とお店の実感がずれる理由は、国ごとの数字を見るとはっきりします。
この記事では、日本政府観光局(JNTO)が9月16日に出した2026年8月の数字をもとに、何が起きているのかを整理しました。あわせて、お店の数字とどう並べれば、ずれの原因が分かるのかも書いています。
8月の数字を、国ごとに見ると

2026年8月に日本を訪れた外国人は309万8,900人でした。前年の同じ月より9.6%少ない数字です。それなのにJNTOの発表では、韓国や台湾、米国など14の国・地域が「8月として過去最高」になっています。全体は減ったのに、過去最高の国がたくさんある、という月でした。
| 国・地域 | 2026年8月(推計値) | 前年同月比 |
|---|---|---|
| 韓国 | 85万500人 | 28.7%増(8月として過去最高) |
| 台湾 | 66万6,000人 | 7.3%増(8月として過去最高) |
| 香港 | 24万7,300人 | 9.4%増(8月として過去最高) |
| 米国 | 19万7,400人 | 1.5%増(8月として過去最高) |
| 中国 | 41万8,000人 | 59.0%減 |
| 総数 | 309万8,900人 | 9.6%減 |
出典は日本政府観光局「訪日外客数(2026年8月推計値)」です。2026年の数字は推計値で、比べている2025年は確定値です。1月から8月までの累計は2,762万6,300人で、前年同期比2.7%減でした。ひと月前の7月は、総数が前年同月比0.1%増で「7月として過去最高」と発表されています。月によって、見出しの言葉が大きく変わるわけです。
過去最高と前年割れが、同じ月に並ぶ理由

国ごとの増減を足し引きすると、からくりが見えてきます。韓国と台湾、香港の3つを合わせると、前年の8月より約26万人増えました。一方で中国は約60万人減っています。増えた国の分を、中国の減少がのみ込んでしまった形です。
中国が減った理由について、JNTOの資料は「中国政府より日本への渡航を避けるよう注意喚起があった」ことと、航空便の減便を挙げています。お店の努力とは関係のないところで、来ている人の顔ぶれが入れ替わっているのです。
Point全体の人数より、お店のお客様の国と伸びている国が重なっているかを見ます。
ですから「過去最高」という言葉を聞いても、自分のお店に当てはまるとは限りません。中国のお客様が多かったお店なら、ニュースとは逆に、減っていてもおかしくない時期です。一つの国に頼った集客をどう見直すかは、中国人観光客の減少に備える記事に詳しく書きました。
お店で実感が出ないとき、考えられること

まず疑いたいのは、お客様の国の割合です。減った国のお客様が中心だったお店は、ほかの国がいくら伸びても、お店の中の数字は下がります。「全体では増えているらしい」と「うちは減った」は、こうして同時に起こります。
伸びている国のお客様が、そもそもお店の前を通っていないこともあります。国が違えば、泊まる街も、使う電車も、よく見るサイトも違います。同じ街の中でも、通りが一本違うだけで歩いている人は変わるものです。統計で増えた分が、お店のある通りまで届いていないのかもしれません。
人数ではなく、1人あたりの金額が動いている場合もあります。観光庁のインバウンド消費動向調査(2026年4〜6月期の1次速報)では、訪日外国人の旅行消費額は2兆5,096億円で前年同期比0.2%増でした。1人当たりの旅行支出は24.4万円で、3.3%増えています。人数はあまり変わらないまま、1人が使う金額が少しずつ上がっているわけです。人数が減っても売上が保てているお店もあれば、その逆のお店もあります。
全体の数字と、お店の数字の並べ方
ずれの原因を知るには、統計をいくら眺めても足りません。お店の数字を国ごとに出して、全体の数字と同じ月どうしで並べてみます。見るのは、お客様の国の割合、国ごとの前年同月比、国ごとの1人あたりの売上です。
たとえば全体では台湾が増えているのに、お店では台湾のお客様が横ばいだったとします。この場合は、台湾の方の目に留まる場所にお店の情報が出ていないか、行き方が分かりにくいのかもしれません。反対に、中国が全体でもお店でも同じように減っているなら、それは市場全体の動きです。お店のやり方を慌てて変える必要はありません。
国ごとの数え方(予約や決済の記録、Googleビジネスプロフィールなど)は、お店に来ている外国人の国の調べ方にまとめてあります。数字がまだ無いお店は、こちらから始めてください。
どのくらいの間隔で見て、何を決めるか

毎月の発表を追いかける必要はありません。月ごとの数字は、連休や航空便、台風で大きく揺れます。8月の発表でも、台風による欠航や航空便の減便が増減の理由に挙げられていました。お店の数字と並べるのは、3か月に1回で十分です。
並べたあとに考えることは、ひとつだけです。お店のお客様の国と、いま伸びている国が重なっているかどうか。重なっていれば、今のやり方を続けます。重なっていなければ、伸びている国のお客様に見つけてもらう工夫をするか、今のお客様に絞って続けるかを決めます。どちらを選んでも構いません。決めないまま様子を見ていると、手だけが増えていきます。
ニュースの見出しに合わせて対応する言語を急に増やすのは、おすすめしません。更新が続かない外国語のページは、かえってお客様を迷わせます。
よくある質問
Q. インバウンドが過去最高なら、うちの店にも来るはずではないですか
増えている国と、お店に来ている国が重なっていなければ、お店の人数は増えません。2026年8月は韓国や台湾が増えた一方で、中国は前年の半分以下になりました。まずお店のお客様の国の割合を出して、どちら側に寄っているかを確かめてください。
Q. 中国からのお客様が戻るまで待ったほうがいいですか
いつ戻るかは、お店の側では決められません。待つなら待つと決め、その間の売上をどう支えるかも一緒に考えておくのが安全です。ほかの国のお客様を増やすと決めるのも一つの選択です。
Q. お店には国別の記録がありません。何から見ればいいですか
予約や決済の記録を3か月分さかのぼって、国ごとに数えるのがいちばん確実です。記録が残っていなければ、今月から予約台帳に国を書く欄を足すところから始めます。
Q. 人数は減ったのに、売上は変わりません。なぜですか
1人あたりの支出が上がっている可能性があります。観光庁の調査では、2026年4〜6月期の1人当たり旅行支出は前年同期比3.3%増でした。人数と売上を分けて見ると、お店の状態がよく分かります。
まとめ
インバウンドが「過去最高」と聞いても、増えているのは一部の国で、2026年8月は全体では前年より減っていました。お店で実感がないときは、お客様の国と伸びている国が重なっているかを、お店の数字で確かめてみてください。
ご相談を受けていてよく見かけるのは、数字は出せても、それを見て何を変えるかで止まってしまうケースです。台湾のお客様が横ばいだと分かっても、原因が情報の出し方なのか立地なのかは、お店の中からは見分けにくいものです。私たちは、お店の数字を全体の数字と並べて、どこに手を入れるか、あるいは何もしなくてよいかを一緒に決めています。
お店の数字の出し方から相談したいときは、無料診断をご利用ください。インバウンドの支援内容はインバウンド集客支援のページにまとめています。
この記事の監修者
出典
- 日本政府観光局(JNTO)「訪日外客数(2026年8月推計値)」(2026年9月16日公表、2026年9月29日取得)
- 日本政府観光局(JNTO)「訪日外客数(2026年8月推計値)」報道発表資料(PDF)(2026年9月29日取得)
- 日本政府観光局(JNTO)「訪日外客数(2026年7月推計値)」(2026年8月19日公表、2026年9月29日取得)
- 観光庁「インバウンド消費動向調査2026年4-6月期(1次速報)の結果について」(2026年7月15日公表、2026年9月29日取得)
- 写真:Studio Stock



